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双语阅读:【日本经典小说连载】东京塔(196)

时间:2012-08-03 10:49:32  来源:可可日语  作者:ookami

东京塔这部小说从“我”一点点长大,一直写到“我”目送着母亲因病去世,各种生活细节每每令人感同身受,因而赚取了读者大把的眼泪,也当之无愧地成了哭泣小说的首席代表。

   そうやって渋茶をすすりながらしょっぱくなっているボクを見て、オカンは自分の部屋に戻り、引き出しから証書を入れる紙製の筒を取り出すと、それを持ってボクの前に座った。中には、ボクが五年間通った大学の卒業証書が入っている。
   オカンはそれを広げると言った。
「これに貯金もなんも、全部使うてしもうた。これがあたしの全財産よ」

   京王線笹塚駅は急行に乗れば新宿からひと駅。普通電車に乗っても初台、幡ヶ谷、そして笹塚となり、渋谷区にありながらも新宿に出る方が都合はよい。中野区と世田谷区の境目にも隣接していて、下北駅に行くのも代々木上原に行くにも歩けない距離ではない。
   東西(とうざい)南北(なんぼく)十字型に商店街が軒を並べ、暮らすことにはとても便利な街だった。上原の方に筋を抜けると幡ヶ谷方面から通りに向かって続く小さな桜並木の遊歩道がある。とりたてて人の目を引くような遊歩道ではなかったが、オカンは桜の季節になると毎日、その小さな歩道を散歩するのが好きだった。
   東京に住み始めて、ボクが不思議に思ったことは、大人が公園にいることだった。なにも遊具のない、ただ木々の繁った公園で人々がそれを眺めている。この人たちは普段、なにをしているのだろうか?なにが楽しいのだろうか?とそれを見ていた。
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   田舎の公園に大人はいない。鎖が錆びて座椅子が腐食したブランコ。穴のあいた滑り台。塗料の剥げ落ちた鉄臭いジャングルジム。その粗末な遊具に子供たちは群がり、雑菌の頻殖した砂場(すなば)で泥遊びをする。
公園にいる大人は酔っ払いか、もう、どこかおかしくなってしまった者で、ボクたちは公園に来る大人が怖かった。
   しかし、東京のなにもない公園には大人しかいない。それぞれが遠くの緑を見つめて、なにかを思い出すような、またなにかを忘れようとするような目で静かにそこに居る。
   東京に住む人々のほとんどは昔、色彩の乏しい自然の中で育って、その色相に飽き飽きしながら巨躯彩色の街へ引き寄せられた。
   ところが、幾千色の街角を息を切らして駆け抜けていくうちに、その鮮やかであるはずの万華鏡が煤けた色に映り始める。灰色に赤。灰色にオレンジ。灰色に空色。すべての色にグレーは混ざり合って、目に見えるものの彩度を鈍く濁らせる。

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