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双语阅读:【青春小说连载】春の夢(137)

时间:2012-02-17 15:50:40  来源:可可日语  作者:dodofly

提要:在黑暗道路上走的过程中,哲之和阳子都没有正式开口说话。寒冷的风吹着两人,脸上的肌肉都变得僵硬起来。这是寒冷彻骨的京都冬天之夜。写有“空房”的四方灯在风中摇着发出吱吱声。

十(8)

「そやけど、陽子もおかしいと思たやろ?熊井さんの、あのお婆さんへの言い方。それに、話のつじつまの合わんこと」
「うん。そやから余計に胸がときどきしたのよ。哲之がお棺の中を覗いてる間中……」
「俺、身の毛がよだったよ」
いつぞやのホテルのネオンが見えたので、タクシーを停めた。黒がりの道を歩くうちに、哲之も陽子もまともに口がきけなくなった。悪寒でたちまち顔の筋肉がこわばってしまったからだった。底冷えのする京都の冬の夜であった。「空室あり」と書かれた四角い電飾板が風に揺すられて軋み音をたてていた。ホテルの主人は、哲之と陽子を覚えていた。ラブホテルの経営者というより、八百屋の大将といった方が適切な笑顔と物腰で、
「おこしやす。また来てくれはりましたなァ」
と言った。
「きょうは泊まります」
哲之の言葉で、主人は、
「お泊りさん、ご案内」
と大声で威勢(いせい)よく言った。いかにも案内係を呼んでいるように見えたが、前と同じように、
部屋には主人が案内した。
「きょうはえらい寒おまんなァ」
「そうですね」
「おふたりさんは、もう結婚する約束が出来ではりませんやろ?」
「なんで判るんですか?」
「この商売も、長いことやってたら、だいたい判りませんねや。そらいろんな取り合わせの客がいてまっせ。どっちもそれぞれ家庭があるなァっちゅうカップルもおれば、小之娘、相手がやくざくとは知らんと連れてこられたんやなァちゅう、そんなカップルもいてま」
主人は風呂に湯を入れてくれながら、そう説明してから、
「お泊りの場合は、朝食がつきませんねや。人手がないんで、珈琲とトースト、それに目玉焼きしか出せまへんけど、それでよろしおまっか?」
と訊いた。
「ええ、それで結構です」
「何時ぐらいに持って来まひょ」
「十時に」
「へい。十時にご朝食」
再び大声を張り上げると、主人は部屋から出て行った。哲之と陽子は顔を見合わせて微笑んだ。
「あのおっちゃんを見てたら、元気が出てくるなァ」
そういえば、このホテルに来るときは、人の生死に立ち会った日ばかりだな、と哲之は思った。前はラング夫妻の自殺未遂のあとで、きょうは沢村千代乃の通夜のあとだ。よれよれのコートを着て立ちつくしたまま、哲之はぼんやりそんなことを考えていた。陽子は哲之のコートのボタンを外してくれ、彼の胸に顔をすりつけた。そして深い溜息をついた。

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