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双语阅读:【青春小说连载】春の夢(101)

时间:2012-01-11 14:59:13  来源:可可日语  作者:dodofly

小说《春之梦》发表于上世纪80年代,描写的是一位大学生的生活。父亲欠债而死,大学生哲之就流浪、打工,偿还所欠的债务。一只被钉到木柱子上的蜥蜴还活着,一直陪伴着他。还有他的爱情生活也激励着他生活。经过一年的奋斗,终于走出阴暗的生活。

八(8)
 
  手前座に坐った沢村千代乃は、背筋を伸ばし、しばらく釜に目をやっていた。哲之には茶は判らなかった。しかしいまこれから行われようとしている茶事は、沢村千代乃ラング夫妻の心をなごませ、異国の人間に自分たちの思いのたけを述べさせようとしてくわたてられたものではないような気がした。花橘の香が、うっすらと四畳半に漂っていた。哲之は、夫妻が互いの手に持っていたものは、おそらく何かの毒物だろうと思った。もう二、三分遅れていたら、ふたりはそれを飲んでいただろう。彼ははっとして茶室の四方に目に配った。キンが、この茶室の中でも、柱に釘づけにされて生きているような思いにとらわれたからであった。沢村千代乃は赤茶碗を引き寄せ、袋の中の茶入を手に取った。茶を習っている陽子以外三人は、作法などまったく知らなかったから、よく泡だった緑色の温かい液体をぎごちなく、とまどいながら飲んだ。
 終わると、沢村千代乃がぽつんと言った。
 「寂しいこと。こんな寂しい茶事ばかりだと、きっと死ぬことがとても魅力的に思えてくるでしょうね」
 それから一息ついてこうつけ足した。
 「おふたかたは、ここでは死ねなかったけど、きっとどこかで目的を遂げるでしょう。お別れのお茶ね」
 「なんでそう思うんですか?」



 と哲之は訊いた。沢村千代乃はそれに何も考えてくれなかった。畳の上に置かれたままになっているドル紙幣の入った封筒を、哲之はラング氏に渡した。ラングは一枚抜き取って、それを哲之の膝に乗せた。茶室の戸の向こうから若い女中の声が聞こえた。
 「熊井様がお越しになりました」
 「どうぞ、お入りなって」
 背の低い丸顔の、だがいかにもやり手らしさを感じさせる四十四、五歳の男が、茶室の入口に正坐した。それだけは封筒に戻さず帯の間に挟んでいた細かいドイツ語で埋められた紙切れを、沢村千代乃は熊井に渡した。熊井がそれに目を走らせている間中、ラング夫妻は、不安そうに互いを見つめあったり、突如毅然たる表情を四人の日本字に向けてたりした。
 「とにかく、書いてあることをそのまま話しましょう」
 「そう張りのある声で熊井は言って、もう一度紙切れに視線を落とした」
 「私、フリードリッヒ?ラングと妻ベーベリ?ラングが、日本の名も知らぬ心優しい人々に多大の御迷惑をおかけすることをまずお詫びいたします。私たちの死を、下記の人物にお報せ下さい。それは私たちの息子です。そして、とりあえずこの金で、私たちの遺体を焼いて下さり、もし息子が日本にこないようでしたら、遺骨を下記の住所に送って下さるようお願いいたします、私たちの死体を病理解剖するかどうかは、貴国のそれに携る方の自由ですが、とりあえず青酸カリによって死に到ったことを、私たち自身の手で証明しておきます。私たちは、ともに同意のうえ毒薬を飲みました。私たちは死を決意するに際し、多くを語りあいました。東洋の、どこか静かな限りなく美しい場所で死のうと意見が一致し、家を売り、家財道具を売り、わずかな宝石類と車を売りました。それはかなりの額でしたが、金に困っている友人二名に三分の一を与えました。三分の一は私たちの聖なる神のおわします教会に寄付いたしました。残りを東洋への旅の費用に当てました。封筒の中の二千五百USドルが、残った最後の金です。私たちの死体の処理にどうかお使いください。重ねて、日本の名も知らぬ心優しいき人々に多大の御迷惑をおかけすることを、心よりお侘びいたします。神よ。どうかそれからの人々に、永遠の幸をお与えくださいますように」
 沢村千代乃は聞き終えてからも、背筋を伸ばし胸を張り、八十を過ぎた老人とは思えない活気を襟足や肩のあたりから放ったまま、いつまでも無言で眼前の釜を見ていた。突然彼女は微笑んだ。その微笑みは、一見穏やかで慈愛に満ちた老人のそれであったが、哲之にはたとえようもなく不気味で残忍な悪意の裏返しに見えた。彼はぞっとして沢村千代乃のからでかかっている言葉を待った。
 「もう死んだわ。おふたりは私の家の茶室で望みを達したのよ。そう言ってちょうだい」

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