「昼間の間は散歩したり、みんなで楽しく遊んでね、そろそろ時間になったわけ。①さあ、時間だ！というので、みんなで窓のそばに座り、固唾(かたず)をのん(注5)で待ってたの。
゛ホラ、沈むわよ"゛ウワーッ、すごい"゛この偉大な夕日にかなう(注６)ものはこの世(よ)には何もない"なんて口々に言いながら、あまりの素晴(すば)らしさに胸打たれて、最後はもう、みんな声も出なくなっちゃったほどだったのね。そのとき突然私が言ったのよ」
「あら、何て言ったのよ」
もうここまでくると②好奇心(こうきしん)(注7)剥(む)き出しです。
「ここで雑魚寝(ざこね)(注8)して、明日の朝、また太陽が出るのを見ない？って。一瞬(いっしゅん)みんな私の言葉が理解できなくて、その後一斉(いっせい)に後ろに引っくり返ったのよ。畳の部屋でほんとよかったわ」
私には、なぜみんなが引っくり返ったのかが理解できません。
「あら、どうして③それがおかしいわけ。あなた何も間違ったこと言ってないじゃないの」
（中略）
「やっぱりママもそうなんだ。（　④　）。ね、わかった？」
「あっ、そうだわ。太陽は東から昇って西に沈むんだものね」
ようやく私も納得(なっとく)。
（提供／『トットちゃんと私』（著者･黒柳朝　主婦と生活社）により）

(注1)　声が弾(はず)む：普段とは違う、うれしそうな声の調子になる
(注2)　相槌(あいづち)を打つ：人の話を聞きながら、「はい」「ええ」などと昌って調子を合わせる
(注3)　ワクワクしながら：期待しながら
(注4)　有志(ゆうし)：あることに関心を持ち、一緒に何かをしようとしている人
(注5)　固唾(かたず)をのむ：どうなるかと緊張(きんちょう)しながら見守る
(注6)　～にかなう：～と同じくらいすばらしい
(注7)　好奇心(こうきしん)：珍しい物事に対する興昧や関心
(注8)　雑魚寝(ざこね)：狭い場所でおおぜいの人が一緒に寝ること

上一页 [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [..19] 下一页